ニュースの概要

第10回となる「フェムテックジャパン フェムケアジャパン 2026」が、2026年7月8日水曜日、東京・表参道で開かれる。月経、妊娠・出産、更年期など、女性の心身に関わる課題を対象に、製品、サービス、技術、企業の取り組みが集まる催しだ。フェムテックは、専用アプリや吸収用品だけを指す段階から、医療、職場環境、保険、データ活用を含む広い領域へ広がっている。節目となる10回目の開催は、話題性を競う展示会から、導入効果や安全性を確かめる商談・連携の場へ移れるかを測る機会になりそうだ。

引用元: 第10回「フェムテックジャパン フェムケアジャパン 2026」7/8(水)に表参道で開催(朝日新聞)

分析・見解

フェムテックが「流行語」から「産業領域」へ

今回の開催で重要なのは、フェムテックが一時的な流行語ではなく、健康課題を分解して解決する産業領域として評価され始めた点にある。初期の市場では、月経周期の記録アプリや吸収用品、温熱機器のように、利用者が自宅で使える商品が目立った。現在は、妊活支援、オンライン診療、更年期の相談、睡眠や気分の記録、企業向けの健康支援まで対象が広がり、利用者の生活と医療・職場をつなぐ設計が競争力になっている。

月経予測の「確からしさ」と限界を伝える設計が課題

技術面では、単に記録項目を増やすことより、データの確からしさと使い道を明確にすることが課題だ。例えば、月経周期の予測は便利でも、周期には個人差があり、体調不良や服薬、産後の変化によって大きく揺れる。予測結果を診断のように表示すれば、受診の遅れや不要な不安につながる可能性がある。今後の製品には、予測の幅、根拠、限界を利用者に伝える設計が欠かせない。人工知能を使う場合も、精度の数値だけでなく、年齢、生活環境、疾患の有無などによる偏りを検証し、誤った提案を訂正できる仕組みまで求められる。

月経・妊娠に関する情報の扱いが信頼を左右する

もう一つの焦点は、健康情報の扱いである。月経、妊娠希望、流産、更年期症状に関する情報は、一般的な購買履歴よりはるかに私的だ。利便性を理由に広告配信や第三者提供へ広く流用すれば、利用者の信頼は一度に失われる。取得する項目を必要最小限に絞り、保存期間、削除方法、外部連携の範囲を分かりやすく示すことが、機能追加より優先される場面もある。特に企業が福利厚生として導入する場合、個人の相談内容が人事評価や配置判断に使われないことを制度として明記しなければ、利用率は伸びにくい。

成果指標は「継続率」へ、真の主戦場は使い続けられない理由の解消

市場の成熟度を測る指標も変わる。以前は出展社数や利用者数が注目されがちだったが、これからは継続率、医療機関への適切な受診につながった割合、欠勤や仕事上の困難の改善、相談対応の時間短縮など、生活上の成果が重要になる。海外では、月経用品への課税見直しや職場の更年期支援を巡る議論が、商品単体ではなく制度と購買の問題として進んだ。日本でも、個人が便利な商品を買うだけでなく、企業や自治体が継続的に支払う仕組みを作れるかが成長の分かれ目になる。

第10回という節目は、展示会の役割にも変化を促す。製品を並べるだけなら、通信販売や動画でも比較できる。会場に人を集める価値は、医療者、当事者、企業の人事担当、投資家が同じ課題を異なる言葉で語り、連携条件を具体化できる点にある。独自の視点を加えるなら、フェムテックの次の主戦場は新製品の発明ではなく、「使い続けられない理由」の解消だろう。入力が面倒、相談先が分からない、費用負担が続かない、職場で知られるのが怖いという障壁を取り除ける事業者ほど、短期の話題性を超えて定着しやすい。

ビジネスへの影響

「女性社員」と一括りにしない支援設計を

企業にとって、今回の催しは新商品を探す場であると同時に、自社の人材施策や顧客接点を見直す場になる。まず確認すべきは、対象者を「女性社員」と一括りにしないことだ。月経の悩み、妊娠・不妊治療、産後、更年期では必要な支援が異なり、本人が職場に詳細を伝えたくない場合もある。匿名相談、勤務時間の調整、休暇制度、オンライン受診、管理職向け研修を組み合わせ、選択肢を本人が選べる設計にする方が利用されやすい。

導入効果は登録者数でなく欠勤・離職意向の変化で測る

導入前には、解決したい課題を数値化したい。例えば、相談窓口の利用率、治療や症状による離職意向、欠勤日数、仕事上の困難を感じる社員の割合を基準値として取り、半年から一年後に比較する。アプリの登録者数だけを成果にすると、使い続ける価値のないサービスでも成功に見えてしまう。健康情報を扱う外部事業者を選ぶ際は、データの保管場所、委託先、削除手順、事故時の通知、医療行為との境界を契約書で確認し、無料提供の代わりに広告利用を許す条件にも注意が必要だ。

個人向け販売と法人向け契約は切り離さず設計する

製品企業は、消費者向け販売と法人向け契約を別々に考えない方がよい。個人が自宅で使える機器でも、薬局、産婦人科、健診機関、保険者と接続できれば継続利用の理由が生まれる。一方で、医療的な効果をうたう場合は、表示の根拠や対象者、禁忌事項を整理し、実証データを販売資料に盛り込む必要がある。展示会では機能の多さより、誰が費用を負担し、どの指標で効果を判定し、問題が起きた時に誰が対応するのかを聞くことが、協業の失敗を減らす。

収益源が一つに偏っていないか、支払いの継続性を見る

投資や新規事業の判断では、利用者の切実さだけでなく、支払いの継続性を見るべきだ。消耗品、月額相談、企業契約、医療機関との連携など、収益源が一つに偏っていないかを確認する。表参道での出会いを名刺交換で終わらせず、対象顧客、試験導入の範囲、個人情報の責任分界、三か月後の評価指標まで決めて帰ることが、実務上の最も大きな成果になる。

関連記事