ニュースの概要

NTTドコモが、通信とデジタルの力を使って女性の健康課題に向き合う取り組みを紹介した。軸になっているのは、フェムテック(=女性特有の健康課題を技術で支える分野)の事業者や関係団体との共創である。ドコモは自社ですべてを作るのではなく、多くの利用者との接点や決済の仕組みといった資産を持ち寄り、外部の知恵と組み合わせる形を選んでいる。月経、更年期、妊活といった悩みは、本人が周囲に相談しにくいことが多い。そのため、スマートフォンという身近な入口から情報や支援を届ける発想には、一定の合理性がある。本稿では、この動きの意味と、他の企業が学べる点を整理する。

引用元: 通信とデジタルで女性の健康課題に向き合う。ドコモが広げるフェムテック共創(NTTドコモ)

分析・見解

通信会社が女性の健康に関わる理由は入口の広さにある

フェムテックの製品は数多く生まれている。しかし、多くは広く知られる前に力尽きる。理由は技術の不足ではなく、利用者に届くまでの道のりが長いことにある。月経管理アプリや更年期の相談サービスは、広告費をかけても継続利用に結びつきにくい。

ここで通信会社の強みが生きる。ドコモのように数千万人規模の契約者を持ち、料金の支払いや本人確認の仕組みも備える会社は、サービスを試してもらう入口を広く用意できる。技術を持つ小さな会社と、入口を持つ大きな会社。この組み合わせが共創の核心である。

悩みの多くは病気ではないが困っている領域にある

女性の健康課題には、病院に行くほどではないが、日常に響く不調が多い。経済産業省は、月経に伴う症状や更年期症状などによる経済損失を、年間で約3.4兆円と試算している。本人の我慢と職場の生産性低下が、静かに積み重なっている状態だ。

この領域は、病院だけでは支えにくい。だからこそ、毎日手に取るスマートフォンや、腕に着ける機器が役に立つ。睡眠や体温の記録を続けるだけでも、本人が自分の変化に気づく助けになる。気づきが早ければ、受診や職場への相談といった次の行動にもつながりやすい。

最大の壁はデータを預けてもらえる信頼である

健康情報は、最も慎重に扱うべき個人情報の一つだ。月経周期や妊娠の可能性に関する情報は、家族や勤務先に知られたくない人も多い。米国では2022年に中絶をめぐる連邦最高裁の判断が出た後、周期管理アプリのデータの扱いに不安が広がった。日本の法的状況は異なるが、利用者の心理はよく似ている。

通信会社は、個人を特定できる情報を大量に持つ立場でもある。通信の記録と健康の記録を結びつけない。目的外には使わない。こうした線引きを最初に示せるかどうかで、利用者の安心は大きく変わる。信頼は、機能より先に問われる。

共創は参加数より続く仕組みで評価される

共創の発表は増えているが、実証実験で終わる例も少なくない。評価すべきは、参加企業の数ではない。実際に使い続ける人がどれだけいるか。不調が軽くなったという実感があるか。そして、事業として採算が取れるか。この三つである。

現実的な出口の一つは、法人向けの提供だ。従業員の健康支援として導入されれば、個人の課金に頼らずに済む。ただし、企業が従業員の健康に踏み込みすぎる懸念もある。個人が自分で選べる形にし、個人の情報が会社に渡らない設計が欠かせない。

ビジネスへの影響

自社の入口を持ち寄る提携モデルを検討する

ドコモの動きから学べるのは、巨大な資産がなくても共創には参加できるという点だ。小売なら来店客との接点、保険なら加入者との長い関係、自治体なら健診や相談の窓口が入口になる。フェムテックの事業者が最も欲しいのは、資金よりも、使ってくれる最初の利用者である。自社が持つ接点を棚卸しし、どの層にどんな悩みを抱える人が多いかを整理するところから始めたい。

従業員向け施策は個人情報を会社に渡さない設計で

人事や総務が女性の健康支援を導入する場合、最初に決めるべきは、会社が見られる情報の範囲である。利用状況は人数だけの集計にとどめ、個人の記録は外部の事業者が管理する形が望ましい。この点を社内に明示するだけで、利用のためらいは大きく減る。あわせて、管理職向けの研修や、休暇制度の見直しも並行して進めたい。道具だけを配っても、相談しにくい空気が変わらなければ成果は出ない。

小さく始めて半年後に続いた人の割合を測る

導入効果は、登録者数ではなく継続率で判断する。たとえば、希望者百人規模で半年間試し、三か月後と半年後に使い続けている人の割合を測る。あわせて、不調による欠勤や、仕事の効率が落ちた実感を、無記名のアンケートで確認する。数字が出れば、予算を取る際の説得力が増す。逆に継続率が低ければ、機能ではなく伝え方や使う場面に問題がある可能性が高い。短い周期で見直す姿勢が、共創を実のある取り組みにする。

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